話に聞くと、ずいぶんひどい悪女のように聞こえてしまいますが……。
たしかに、オーナーはものすごい美形で、私のことを守ってくれて、とても親切だ。
でも、騎士団長様の前にいる時みたいにドキドキしない。
「……オーナーは、兄のようなもので」
宮廷魔術師であるオーナーとは、まだ私が子どもの頃、ある出来事をきっかけに出会った。
それ以来、なぜかオーナーは私のことを恩人だといって、レトリック男爵家が没落した時、私を連れ出してくれた。
連れ出してくれた先が、あまりにかわいらしいお店だったから、とても驚いたけれど……。
「そうだな。……少しだけ、嫉妬してしまったようだ」
「え? しっと?」
「――――聞かなかったことにしてくれないか」
じっと私を見つめていた視線をそらした騎士団長様の耳は、今日も赤い。
部屋の中は、寒くなんてないのに。
それに気がついてしまった瞬間、私の頬も見えないけれど、たぶん真っ赤になっていた。


