「ふむ。自分より恥ずかしがっている人が目の前にいると、存外冷静になれるものだな」
口の中だけでつぶやかれた言葉は、私には聞こえず、独り言かな? と軽く首をかしげて見上げる。
本当に、黒い騎士服がよく似合う。
一部の上位騎士だけが着用を許される正装の白い騎士服も、騎士団長様のために誂えられたのかと錯覚するほど似合うけれど、逞しくて長身の騎士団長様には、黒の騎士服が本当にお似合いだ。
「さあ、こちらへ。リティリア嬢」
声をかけられて、騎士団長様を見つめすぎていたことにようやく気がつく。
そして、周りを見渡す。


