【書籍化・コミカライズ】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?


「――――っ!?」

 あまりの恥ずかしさに、手のひらで押しのけようとしたのに、抱きしめられているから、離れられない。
 ものすごく速くて強い、この鼓動は、いったい誰のものなのだろう。

 私の? でも、もう一つ……。

「騎士団長様」
「……大丈夫か?」

 ようやく、緩んだ腕にホッとして、でもなぜか落胆しながら顔を上げる。
 心配させてしまったのだろう、少し眉を寄せた騎士団長様は、私と目が合うと微笑んだ。

「いっそ、抱き上げて歩きたいくらいだ」
「それは……」

 一瞬だけ想像してしまった。
 きっと、騎士団長様が、荷物みたいに私を担ぐなんてないだろうから、脳内イメージはお姫様抱っこだ。