「――――っ!?」
あまりの恥ずかしさに、手のひらで押しのけようとしたのに、抱きしめられているから、離れられない。
ものすごく速くて強い、この鼓動は、いったい誰のものなのだろう。
私の? でも、もう一つ……。
「騎士団長様」
「……大丈夫か?」
ようやく、緩んだ腕にホッとして、でもなぜか落胆しながら顔を上げる。
心配させてしまったのだろう、少し眉を寄せた騎士団長様は、私と目が合うと微笑んだ。
「いっそ、抱き上げて歩きたいくらいだ」
「それは……」
一瞬だけ想像してしまった。
きっと、騎士団長様が、荷物みたいに私を担ぐなんてないだろうから、脳内イメージはお姫様抱っこだ。


