「きっと、何をされたって、騎士団長様のこと、嫌いには、なりませんよ?」
「…………っ」
それは私の素直な気持ちだった。
でも、もしかしたら、何か間違えたのかもしれない。
ギシリ、と音がしたのかと思った。騎士団長様が、その動きを完全に止める。
「そ、そうか……」
いつも低くて、耳に響く声が、今はなぜかかすれている。
そして、はじめに耳元が赤くなり、そのあと騎士団長様の顔は赤くなった。
その顔を隠そうとしたのか、口元に添えられた大きな手。でも、まったく隠せていないことに、気がついているのだろうか。
私は、その変化を、見てはいけないものを見てしまったような気持ちで、呆然と見つめた。


