「ふっ……ふぇ!?」
「君がいけない……。だって、俺が好きなのは」
目の前の光景が信じられなくて、私の心臓は飛び出してしまいそうなくらい鼓動を早める。
その時、どこかについたらしく、馬車がガタンと揺れて停まる。
ピタリと騎士団長様は、動きを止めた。
そして、じっと見つめていた何の変哲もないフワフワしているばかりの薄茶色の髪から視線をそらし、私の淡い紫の瞳をのぞき込む。
「ああ、こんなことをして、嫌がられたり、距離をとられたりしたら困るな……」
「え……?」
「――――許可も得ず、無礼なことをした。許してほしい」
「……私が、騎士団長様を嫌がる?」
どうしても、そんなことは想像できない。
たぶん、騎士団長様は、ひどいことはしないと思うけれど、もしされたとしても、きっと嫌いになんてなれそうもない。
距離をとることに関しては、考えてなかったとは言い切れないけれど……。


