当たり前よね。そう思うと同時に、騎士団長様の口からそのことを聞いてしまったら、なぜか分からないけれど、きっと私はしばらく立ち直れない、そんな気がしてくる。
騎士団長様の手は、ゴツゴツしていて、大きくて、少し冷たい。
手が冷たいのは、朝ご飯を食べないからに違いない。
今後、カフェフローラにまた来てくださるか分からないけれど、いらっしゃったときには、絶対に何か召し上がっていただこう。
その前に、ちゃんと伝えておかないと。
そうでなければ、騎士団長様は安心できないに違いないから。
「あの」
「……リティリア嬢?」
「私、秘密は絶対守りますし、ちゃんとお二人のために協力します」
「秘密を守ってもらえることについては、願ってもないが。……二人に協力?」
なぜか、語尾が疑問形だった騎士団長様。
私が、お手伝いできることなんてないってことかしら。
せっかく、少しでもお力になりたいと思ったのに、必要ないのかしら。
……協力してほしいわけではないの? それなら、なぜ私は、騎士団長様と手をつないだまま、お屋敷に行こうとしているの?


