「ありがとうございました。お客様に助けていただくなんて、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「いや……。こちらこそ、勝手に婚約者などと言って申し訳ないことをした。不快だっただろう」
「そんなわけないです!」

 つい、大きな声になってしまった。
 騎士団長様は、一瞬目を丸くして、それからなぜがうれしそうに笑った。

「……そうか。だが、少し気になることがある」
「え……?」
「俺のほうで調べるが……。ところで今日、何時頃仕事が終わる?」
「え? 三時頃には」
「そうか。……迎えに来る」

 聞き間違いなのかしら。
 今、迎えに来るって聞こえた気がしたのだけれど……。

「えっと、お忙しい騎士団長様にこれ以上ご迷惑と負担をおかけするわけには」
「リティリア嬢の安全には、代えられない。お願いだから、待っていてほしい」
「ふぇ……」

 それだけ言うと、騎士団長様は、私を安心させるように頭を撫でて去っていく。
 サンドイッチを食べた分、いつもより多い銀貨を私の手に残して。