「――すまない。レトリック男爵領から帰ってきたころから、違和感は感じていたんだ……」

 鏡の中に映るのは、いつもの私に違いない。
 けれど、記憶をたどってみれば、確かに以前よりも自分の瞳の色が濃くなっていることがわかる。

「どうして……」
「それ以上の質問は、受け付けてもらえなかったが、対価さえ支払えば」
「っ……ダメです! そもそも、オーナーを助けたときの対価だって」
「……それは、問題ないから」
「アーサー様は、いつだって自分が大変なことを隠してしまうから、信じられないです」

 思ったことを告げてしまったあと、これでは騎士団長様を信頼していないみたいだったと後悔する。
 けれど、お詫びの言葉を継げる前に唇は塞がれてしまった。