【書籍化・コミカライズ】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?


 目の前にいて、笑顔のまま少し慌てているお方は、この国ディアンテールの国王陛下のはずだ。
 それなのに、誰よりも陛下に忠誠を誓う騎士団長様が、剣に手をかけるなんてありえるはずが……。

(かけている! 明らかに剣を抜こうとしている!)

 緊張のあまり固まってしまった私の前を長いローブを羽織ったオーナーが通り過ぎる。

 そして、パチンッと指先をひとつ鳴らすとその姿は筆頭魔術師の正装から、シャツ、そして揃いのズボンとベスト、丈の長いソムリエエプロンという姿になった。
 よく見かけるユニフォームのようでありながら、人外の美貌で微笑むオーナーが着ると別次元の麗しさだ。

「お客様、店内で刃物を持ち出されるのは困りますね」
「……シルヴァ殿、すまない」
「おや、シルヴァまで怒っているのか。珍しい」
「ええ、リティリアに手を出すなら誰であろうと許しません。それからあまり護衛を困らせるものではありません」
「それは……」