【書籍化・コミカライズ】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?


「……ふむ、淡いが美しい紫だな。しかし、以前得た資料に比べて幾分色合いが濃くなったか?」
「え……?」

 そう呟いて、コーヒーを口にした陛下に、不敬だと思いながらもその言葉の意味を尋ねようとしたとき、店内に規則正しい足音が響いた。

「こちらにいらっしゃいましたか、陛下、いやお忍び中でしたね……。レイン殿」
「ああ、見つかってしまったか」
「こちらには、どのような御用向きで?」

 目の前にいる人は、いつもお屋敷にいる私に甘くて優しくて暖かい騎士団長様とは別人のようだ。
 黒い騎士服がよく似合う、ディアンテール王国の騎士団長、アーサー・ヴィランド。
 信じられないことに彼は、私、リティリア・レトリックの婚約者なのだ。

「少しだけ、この店のオーナーに用事があってね」
「……それなら、仰ってください。肝を冷やしました」
「あと、この店の看板娘にも興味が……って、剣に手をかけるな!」
「――リティリアを利用するつもりなら、俺にも考えがあります」