「あっ!」

 ふと浮かんだのは、レトリック男爵領が、危機に陥ったとき、助けてくれた騎士様たちの姿だ。
 その中にはもちろん、当時は隊長だった騎士団長様がいて、その隣にいつもいたのは……。

(そう、確かにいらしたわ。それに、騎士団長様に聞いた副団長様の特徴に一致する。赤茶色の髪に柔和な笑顔だと聞いたもの!)

 けれど、お客様としていらしているのだ。
 余計な詮索は、無用に違いない。
 そっとメニューとお冷やを席にお届けして、注文を待つ。
 そしてメニューが閉じられたのを確認して、席に近づき声をかける。

「お決まりですか?」
「恋する苺のラテと、キラキラキャラメルのクリームタルト、それから手作りクッキーを」
「かしこまりました」