「騎士様……?」

 そこには、赤茶色の髪に柔和な笑顔の騎士様が立っていた。騎士団長様とお揃いの制服は、彼が騎士だということを明確に示している。

「いらっしゃいませ」
「一人です」
「かしこまりました!」
「ああ、目立たない席のほうが」
「はい、ではこちらのお席はいかがでしょう」

 目立たないといえば、もちろんいつも騎士団長様をご案内するオブジェの影になった周囲から見えにくい席が良いだろう。
 そう考えた私は、早速その騎士様をご案内することにした。

「……あれ?」

 席にご案内して、メニューと爽やかな柑橘類の香りをつけたお冷やを用意しながら、ふと首をかしげる。
 どこかで、あの騎士様にお会いしたことがある気がしたのだ。

(ずいぶん前のことだけれど、どこかで話題にも上っていたような……?)