「……リティリア」

 頭にクマを乗せたまま、立ち上がった騎士団長様。私の手を離れたクマのぬいぐるみが、やはり騎士団長様に突撃していく。

 クマのぬいぐるみが、騎士団長様に抱き上げられる。
 いつの間にか、他のクマたちは別の場所に走り去ってしまった。
 騎士団長様の頭に乗った一匹を除いて。

「ふふ!」
「なんだ。ああ、これか……」

 クマのぬいぐるみは、頭から降りようとしたのだろう。
 しがみついているせいで、まるで騎士団長様の頭にクマ耳が着いているように見える。

「アーサー様の頭にクマ耳が生えているみたいで可愛いです。あのときと、逆ですね」
「……そうだな。では、もう一度受け取ってくれないか」

 森のクマさんぬいぐるみが、ピタリと動きを止めた。

(まるで、あのときの再現みたい……)