雲の隙間を抜けた先は、大木に囲まれた小さな空間だった。
その真ん中にある切り株の上には、見ているだけでフワフワの触感を予想させるクマがいた。
いや。このくったりと柔らかそうなクマには見覚えがある。
そう、これはクマではない。クマのぬいぐるみだ。
「確かに部屋に置いてきたはずなのに、いったいどうして……」
不思議なことに、クマのぬいぐるみは、鮮やかなキノコが生えた切り株の上に、二本足で立ち上がっている。
「……まるで、アーサー様にこのぬいぐるみをもらったときの店内みたい」
懐かしい気持ちとともに、そっと抱き上げれば、直前まで立ち上がっていたのが嘘のように、くったりと私の手の中に収まったぬいぐるみは、いつもと同じ、柔らかな抱き心地だ。


