「あの、アーサー様?」
「……笑って」
「へ? あの……」
笑っているような状況じゃないと思うのに……。
けれど、妖精たちは騎士団長様が作り上げた魔法の壁を越えることはできないらしい。
薄暗かった洞穴が、妖精たちの光に仄かに照らされる。
「あの……」
「リティリアに、笑ってほしいから」
「――――そんなのっ!」
ボロボロこぼれてしまったのは、不可抗力の涙だ。
だって、私の笑顔は、幸せそうに笑っている騎士団長のそばしか、きっとない。
どうしてわかってもらえないのだろう。
きっと、私にとって何よりも大切なのが、騎士団長様なんだって、伝わっていないに違いない。
「えっと……。泣かないでほしいのだが」
眉根を寄せて、本当に困ってしまった様子の騎士団長様を上目遣いににらんでしまう。
口にしたら伝わるのだろうか……。


