孤独も悲しみもあるのだとしても、騎士団長様なら何でも手に入れられるのに。
それなのに、時々私のために全てを投げ打ってしまいそうな危うさを見せるから、いつかいなくなってしまうのではないかと不安になってしまう。
今、ここには私たち二人しかいない。
薄暗いこの場所では、誰にも遠慮はいらないはずだから。
「この宝石を手に入れるため、何を差し出したのですか?」
「……宝石を手に入れるためじゃない」
「……え?」
薄暗がりで二人きり。
そっと落ちてきた口づけは、まるで許しを請うみたいだと、なぜか思った。
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