「……一匹でも傷つけてしまえば、その人間を妖精たちは永遠に許さない」
「……えっ?」
「つまり、逃げるしかないか」

 私を抱え上げ直して、走り出した騎士団長様。
 本当に今日は、なんてめまぐるしい一日なのだろう。

「えっと、走れます!!」
「この方が、間違いなく早い。それより、宝石は持っているか?」

 宝石といえば、あのこぶし大の宝石に違いない。

「はい」
「紫色の宝石を妖精に向かって投げてくれ。くれぐれも傷つけないようにな」
「わかりました!」

 ポシェットをまさぐって、取り出した宝石は、運良く紫色だった。

(少しもったいないけれど……)

 宝石としても、価値が高いだろうそれを思い切って妖精たちの方に投げる。
 とたんに、妖精たちはそれに群がって、あっという間に距離をとることが出来た。