「そう。まあ、予想はしていたけれど、ヴィランド卿のことはいいの?」
「……アーサー様のこと、誰よりも大好きで、愛しています。でも、恩知らずになってしまったら、正面から向き合うことが、もう出来ないから」
「……そうね。あなたは、そんな子だわ」

 魔女様は、私に歩み寄ると、フワフワした髪を数本掴んで引き抜いた。
 プチプチッいう音と、軽い痛み。
 
「さ、こっちへ来なさい」
「はい」

 赤い屋根の家。乾いた薬草の香りに満たされたいつものテーブルを通り抜け、入ったことがない部屋に案内される。

「拾ったんだけど、寝場所を占領されて困っているの。何とかしてくれる?」
「……オーナー!」

 白いシーツが掛けられたベッドに横たわっているのは、夜空のような紺色の髪、今は隠された金の瞳をした人だ。