***

 街ゆく人は、誰も彼も幸せそうだ。
 この平和は、騎士団長様ががんばって守ったのだと自分のことみたいに誇らしくなる。

 けれど、騎士団長様に手を引かれて入ったお店が、あまりに高級そうで、思わず私は尻込みしそうになった。

「始めからこうすればよかった」
「えっと……」
「リティリアはお揃いがいいのだろう? 今度の夜会のドレスをオーダーしよう。それから、結婚式だな」

 楽しそうな騎士団長様。
 お揃いについて騎士団長様に説明しようなんて、おこがましいにもほどがあった。

(そうよね、苦労したとはいっても伯爵家の生まれで、この国の上層部に位置する方だもの……)

 けれど、そんなことを考えていられたのも、最初のうちだった。
 そう、全身くまなく採寸され、分厚いカタログを隅から隅まで確認し、店を出たときには疲労困憊だった。

「今度は屋敷に呼ぼう」
「……あの」
「それにしても、楽しみだな?」
「は、はい……」

 そして、最後に来たのは、カフェフローラだった。