会場の注目は、もう浴びてしまった。
それなら、楽しく踊るほうがいいのだろう。
ずっとお世話になってきた、兄のようなオーナーは、微笑みを浮かべたまま私を見下ろしている。
一曲踊ると、オーナーは手を引いて、国王陛下との会話を終えた騎士団長様に私を引き渡した。
「そろそろ休憩時間は終わりだ。楽しかったよ、リティリア」
「私も、楽しかったです」
パチリと片目を瞑り、ウインクしたオーナーは、いつもどおりだ。
去っていくその背中を見送る。
「さあ、リティリア。もちろん俺とも踊ってくれるのだろう?」
「アーサー様?」
引き寄せられた腕の力は強く、私たちの距離はこの上なく近い。
オーナーは、とても素敵だけれど、一緒にいてこんなにも頬が上気してしまうのは、騎士団長様だけだ。
「……俺は心が狭いんだ。ファーストダンスは譲ったのだから、俺の唯一だと知らしめるためにも、二曲は踊ってもらう」
「えっ」
淡いグリーンの瞳は弧を描いているけれど、どこかメラメラと燃えているようだ。
そのまま、どこか情熱的で距離の近い私たちのダンスは、やはり会場中の視線を集めてしまったのだった。


