【書籍化・コミカライズ】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?


 会場の注目は、もう浴びてしまった。
 それなら、楽しく踊るほうがいいのだろう。
 ずっとお世話になってきた、兄のようなオーナーは、微笑みを浮かべたまま私を見下ろしている。

 一曲踊ると、オーナーは手を引いて、国王陛下との会話を終えた騎士団長様に私を引き渡した。

「そろそろ休憩時間は終わりだ。楽しかったよ、リティリア」
「私も、楽しかったです」

 パチリと片目を瞑り、ウインクしたオーナーは、いつもどおりだ。
 去っていくその背中を見送る。

「さあ、リティリア。もちろん俺とも踊ってくれるのだろう?」
「アーサー様?」

 引き寄せられた腕の力は強く、私たちの距離はこの上なく近い。
 オーナーは、とても素敵だけれど、一緒にいてこんなにも頬が上気してしまうのは、騎士団長様だけだ。

「……俺は心が狭いんだ。ファーストダンスは譲ったのだから、俺の唯一だと知らしめるためにも、二曲は踊ってもらう」
「えっ」

 淡いグリーンの瞳は弧を描いているけれど、どこかメラメラと燃えているようだ。

 そのまま、どこか情熱的で距離の近い私たちのダンスは、やはり会場中の視線を集めてしまったのだった。