【書籍化・コミカライズ】鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?


 私の答えを聞かないままに、オーナーは私の手を引いて会場の真ん中に歩み出てしまった。
 一瞬だけ国王陛下と談笑していた騎士団長様と目が合う。
 騎士団長様は、少し口の端を歪め一つだけうなずいた。

「ほら、ヴィランド卿のお許しも出た」
「……シルヴァ様」

 力強い騎士団長様のリードと比べて、優しくどこか遠慮がちなオーナーとのダンス。
 迷っているうちに、音楽は流れダンスが始まってしまう。

「今夜が、最初で最後だから、許して。それに、俺がリティリアを大切にしていることを安全のためにも知らしめたほうがいい」
「そんなこと……」

 まるでお別れのような言葉、何を考えているかが読みにくい神秘的な微笑。
 美しい紺色の髪が揺れる、私を見つめる金の瞳が、まるで夜空の流れ星のようだ。

「夜を楽しもう」
「……分かりました」