真剣に考える私の唇に、掠めるように触れた唇。
きっと、口紅が落ちてしまわないように配慮してくれたのだろう。
でも、少しだけ物足りない。
「アーサーと」
「騎士団長様?」
「会場でも、アーサーと呼んで」
「えっ」
「……何を驚く? リティリアは、俺の婚約者だ。騎士団長では、おかしいだろう?」
そう言って私を見つめていた淡いグリーンの瞳を細めた騎士団長様は、はにかんだように笑った。
「……アーサー様」
「リティリア、君を守る準備は整った。婚約者だと公示したなら、次は……」
手を引かれれば、上品に輝く淡い紫のドレスが空気を含んでフワリ広がる。
私を見つめる騎士団長様は、今までに見たことがないほど幸せそうだ。
頬を染めて頷いた私も、今までで一番幸せな気持ちでいっぱいだった。


