「……リティリア、美しいな」
「騎士団長様こそ、物語の中から抜け出てきたみたいに眩しいです」
「はは、光栄だ。リティリアこそ、まるで絵本の中の妖精みたいだ」

 妖精だなんて、騎士団長は私のことを喜ばせてしまうのが本当に上手だ。
 そして、幼いころ夢中になって読んだ騎士物語の主人公みたいに完璧な騎士様が目の前にいる。

「本当に素敵です」
「そうか? リティリアにそう言ってもらえるとうれしいな。しかし本当に、誰にも見せずに隠しておきたい」
「大げさです」
「……そんなところもリティリアの美徳だが、本当に可愛らしいから、今夜は俺のそばを離れないで」
「……はい」

 差し出される白い手袋を身につけた大きな手。
 そっとのせた私の手が、まるで子どもの手みたいだ。

「今夜、君のことを婚約者として公示する。だから、ひとつだけ守って欲しいことがある……」

 それは何かしら? 次期伯爵夫人として、毅然とした態度、それとも優雅に騎士団長の婚約者として……。