寝癖が収まると、騎士団長様は今度は私を鏡台の前に座らせた。
 そのまま、黙々と絡まりやすくてくせっ毛な私の髪を梳かしていく。
 騎士団長様の手に収まると、少々ブラシが小さく見えて、口元が緩んでしまう。

 髪をとかし終えた騎士団長様は、器用に私の髪を編み込んでくれた。

「どうしてこんなこと出来るのですか」
「え? 見ていたら出来るだろう」
「…………え、器用すぎませんか」
「そうかな?」

 おそらく、騎士団長様は何でも出来てしまうに違いない。
 どちらかというと不器用な私は、いまだに一人で髪をまとめるのには四苦八苦しているというのに。

 見る間に整えられた髪の毛は、ハーフアップにされて、どう見ても私が自分でまとめたよりも美しい。
 しかも、騎士団長様は、整えられた髪の毛に口づけを一つ落としてきた。
 最後に結びつけられたリボンは、騎士団長様の瞳の色みたいな淡いグリーンをしている。

「毎朝、髪をとかしてくれるのなら、毎朝こうしてリティリアのことを飾り付けようか」
「じ、自分で出来ますから!」
「そう? ……残念だ」

 私は、ようやく収まった心臓の鼓動が再び高まってしまって、嬉しいし、恥ずかしいし、少し残念そうに笑った顔すら可愛すぎて、本当にずるい、と思ったのだった。