「10日後には、婚約者として公表するんだ。その後は、すぐにでも結婚したいな?」
「え。そ、それは……」
「――――嫌か」

 騎士団長様がわかりやすく肩を落とす。
 困ってしまう。私はもちろん嬉しいけれど、まだ解決できていないことがたくさんある。
 このままでは、騎士団長様に迷惑を掛けてしまう。

「……レトリック男爵領への支援を止めていたのは、王弟だった」
「……予想以上に大物ですね。巻き込まれてしまいますよ」
「喜んで……。だが、実際問題、騎士団長としても見過ごすわけに行かない。おそらく、王弟の目的は、魔鉱石を使って隣国と手を組み……」

 その時、食事が出来たという知らせがあった。
 言葉の続きは途切れてしまったけれど、魔鉱石を使って隣国と王弟殿下が手を組むだなんて、大変なのではないだろうか……。

「アーサー様」
「リティリア……。そんな顔をさせたいわけではないが、王国の平和を守るためにも見過ごすことが出来ないんだ」
「……でも、危険ですよね」

 その質問への返答はなかった。
 代わりに額に軽い口づけが落ちてくる。

「心配するな……。俺は強いから」
「――――心配くらいさせてください」