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 急な斜面を登るなんて、普段の生活ではほとんどない。
 すぐに息が上がってしまう私に気がついた騎士団長様が手を引いてくれる。

「抱き上げて登ろうか?」
「……恥ずかしいから結構です」
「そう。それなら、二人きりの時に」

 騎士団長様は、自分がどれほどカッコいいか知っているのだろうか。
 少々自覚が足らない気がしてならない。

 すでに、足元には小さな小さな白い石ころが混ざり始めている。
 小さな魔鉱石のかけら。一つ一つはお土産くらいの価値しかないかもしれないけれど、数を集めれば十分魔道具の稼働に使えるだろう。

「さ、そろそろ妖精たちの領域です。私から離れないでくださいね? 振り出しに戻ってしまいますから」

 妖精たちは、基本的にこの先に人を通さない。
 私と一緒の場合を除いて……。