見慣れてしまったと思っていたけれど、こうしてみればやっぱり騎士団長様は、信じられないほど見目麗しい。

 淡いグリーンの瞳を細めてニッコリ笑った騎士団長様は、その笑顔にどれだけの破壊力があるのかなんて知らないのだろう。

 密かに呼吸を整える。私だって、もちろん騎士団長様がそばにいてくれたなら、嬉しいし楽しい。

「…………わかりました。行きましょうか」
「…………」
「あの?」

 少し眉を寄せたあと、騎士団長様は、ゆるく首を振って、なにもなかったかのように微笑んだ。

「何でもない」
「……そうですか?」

 だからそのときは、気にもとめなかったのだけれど……。

 騎士団長様の嫌な予感はよく当たる。
 だから、あとになって思えばきちんとそのことを伝えて欲しかったけれど……。

 聞いたところで、結果は変わらなかったのだろう。
 私はあきらめのため息とともにそんなことを思うことになるのだった。