用意されていた紅茶を一口飲んで、オーナーが顔を上げる。

「手に持っているのは、魔鉱石の原石かな?」

 私がかごに入れて抱えてきたのは、オーナーの言う通り魔鉱石だ。
 ぱっと見ただけなら、ゴツゴツした白い石にしか見えないけれど、割ってみれば分かる。

 そもそも、魔鉱石の原石は、当たりを引くのが難しい。
 何千個も割って、ようやくまともに使えるサイズの魔鉱石が出るのが一般的だ。

 ……でも、これは妖精が教えてくれたものだから。

「リティリア、俺は見るのが怖い」
「オーナーも、騎士団長様も見ていて下さい。今から恩返しします!!」
「恩返し、とは?」

 かごに入ったトンカチとノミ。
 注意深く原石を割れば、中から透明な石がコロリと飛び出した。

 ……ふふっ、初めから大当たり。

「そのサイズ……」
「予想の上を行きそうだ」

 騎士団長様とオーナーの、驚いたようなあきれたような声。
 でも、まだまだこれからです。

 それから小一時間、私は黙々と原石を割った。
 戦果は思った以上。市場に出回る数倍の大きさの魔鉱石も、三個ほど紛れていた。

「どうですか!?」
「……どうですかと言われても」
「恩返しになりますか!?」

 少し戸惑ったように見えた騎士団長様は、小さいけれど一番質がいい魔鉱石を手に取った。

 ……お目が高いです!!