魔女様の家に初めて招かれて、椅子に座らされる。
 古びた木のテーブルと椅子は、けれど磨き抜かれてピカピカだ。
 薬草の匂いなのだろうか、甘いような、苦いような、どこか懐かしいような香りが漂っている。

「それにしても、驚いたわ。まさか、こんな大物を連れてくるなんて」
「……あの、申し訳ありませんでした。お許しいただけないでしょうか」

 目の前に出された飲み物は、コポコポと泡立っている。
 飲んでも大丈夫なのか、心配になってしまう。
 それなのに、隣に座った騎士団長様は、迷う仕草もなく、その飲み物を一気に飲み干した。

 それなら、私も。と思ったのに、騎士団長様が、テーブルの下から出そうとした、私の手をそっと掴んで引き留める。

「……潔くて、好感が持てるわ。でも、命は大事にしなさいよ? 毒でも入っていたらどうするの」
「入っていたとしても、飲み干したでしょう」
「……そう。……騎士団長様? あなたのことを占ってもいいかしら?」

 唐突な魔女様の提案。
 テーブルの中で手が握られたことに動揺していた私は、驚いて顔を上げる。

「そうしたら、リティリアが、部外者を連れてきてしまった非礼を許してあげるわ」
「わかりました」

 一瞬魔女様の紫の瞳が怪しく輝く。
 私たちの目の前に差し出されたのは、一枚のカードだった。
 そこには、男女がと一人の美しい女神様が描かれていた。