「リティリア、お疲れ様!」

 バックヤードにいた、ダリアが裏口から出ようとした私に、声をかけてくる。

「お先に、ダリア。あ、そうだ。もし、オーナーがお店に寄ったら、星屑の光がもうなくなりそうだって伝えておいてくれる?」
「うん、わかったわ。リティリアは、魔女様のところに寄って行くのでしょう? 気をつけてね」
「うん。ありがとう、また明日」
「また明日」

 私のフワフワと揺れる髪の毛は、店の外に出たとたん、風に吹かれて揺れた。

 お店のなかから外に出ると、いつも魔法が解けてしまったような、なんともいえない気持ちになる。
 誰もいない小さな部屋に帰るのは、少しだけさみしくて、少しだけホッとする。

「魔女様は、いらっしゃるかしら?」

 魔女様は、文字通り世界中を飛び回っているから、お会いできないことも多い。
 私は、店を出てまっすぐ、王都のメインストリートを歩いていく。

 ゆらゆら揺れる空気がある路地裏。
 そこが、魔女様の家への秘密の入り口だ。

 普通の人には、見つけられない、その場所。

 けれど、カフェフローラのオーナーと、魔女様は古くからのお知り合いらしく、その関係で、私も特別に敷地に入ることを許されている。