溶かしたチョコレートは、つやつやのトリュフへと姿を変える。
 少しビターで、私だったらもう少し甘い方が好みだけれど、ブラックコーヒーを嗜む騎士団長様には、きっとこちらが口に合うに違いない。

「少しだけ、飾り付けしようかな」

 振りかけたのは、星屑の光が、さらに小さく砕けたかけら。
 真っ黒なチョコレートに、キラキラ輝く星屑のかけらが、まるで夜空みたいだ。

 ……喜んでもらえるといいな。

 仕上がりに満足しながら、在庫確認をしたけれど、明日中になくなりそうなのは、七色のさくらんぼと、星屑の光だけのようだ。

「やっぱり、今日中に魔女様の家におじゃましないと……」

 このお店で使っている食材は、手に入りにくいものが多い。
 その代わり、どの飲み物も、お菓子も、とても可愛らしくて美味しいのだ。

 制服から、普段着に着替えて、三つ編みにしていた髪の毛を解く。

 ……いけない、クマ耳のカチューシャを外し忘れそうになったわ。もし、このまま外に出てしまったら、相当恥ずかしい……。
 クマ耳のカチューシャをロッカーに入れて、代わりにくったりとした感触のクマのぬいぐるみをとりだして、大事に抱える。