春。君とはじめて話した日のことを昨日のことのように覚えてる。

君は覚えてないかな?

 辛い受験勉強をのり超えて第一志望の高校に合格した私、千木日ゆうは新しく始まる高校生活に胸を膨らませていた。
 なのに入学早々事件は起こった。
(あれ?私の席がない??)
クラス分けの表を見て自分のクラスに来たはずなのに自分の名前が座席表にないのだ。
不思議に思ってよーく見ると『池川すみ』という漢字表記が二つあってその片方のフリガナが『チギヒユウ』になっている。
(なんだ。ただの印刷ミスか。)
そんなことを思いながら席について待っていると、担任の先生らしき人が教室に入ってきた。
「皆さんこんにちは。今回この1年5組の担任を務めることになった増田と申します。先生担任初めてやからわからんこと多くて迷惑かけはるかもしれへんけどよろしゅうな。」
(えっ、すごっ。マジな関西弁だ。なんか明るそうな先生だなー。楽しいクラスになりそう。)
そのあとも見事な関西弁で増田先生は次々と業務連絡をしていった。

 入学式も無事終わり、高校はいって最初のHR。自己紹介カードを書くらしい。「教室に掲示するぞ~」って先生が言ってる。
(うわ~なんて書こう?みんなに見られるだろうし失敗できないな。)
ドキドキしながら埋めていく。
名前:千木日ゆう 
誕生日:8月29日
趣味:読書(小説、漫画なんでも読みます!)
出身中学:S中学校
その他…
「そろそろ集めるぞ。後ろから前に送ってや。明日までには掲示しとくな。」
先生の声で紙が回収されてく。

次の日...
 「おはようー」
 『おはよーう』
最寄りの駅で集合したのは同じ中学で高校も同じ穂澄と蒼乃だ。
実は穂澄とは同じクラスだ。
「いいなー。二人は同じクラスで。私も一緒がよかった!」
蒼乃がちょっとすねた様子で言う。頬を膨らませててかわいい。
「そうだね。私も蒼乃と同じクラスがよかったけど、選択科目がそもそもちがうからね。残念だよ。」
私たちの高校には一年から芸術科目の選択があって、私と穂澄は音楽で蒼乃は美術だ。
芸術の選択は本来はあまりクラスわけには関係ないんだけど、私たち五組は学年で唯一の音楽選択の人だけのクラスで通称:音クラって呼ばれてる。だから、蒼乃だけ同じクラスになれなかったのだ。