断片集


なんてやっていたとき、彼女に出会った。パッチワークのワンピースを着ている彼女だ。それから小さな女の子が、こちらに手を振っている。まるで、頑張れと言っているみたい。
なんだかそれを見て、頭の中が途端にすっきりしてきた。
ああ、なるほどね。そういうこと。
「わかった、わかりましたよ……最後だし、ね」
やりますよ。
あーあ、愛着とか、思い出とかって、持ちたくなかったんだけどな。


ホールに行った。
1階のホールくらいしか、もう隠せる場所は無さそうだけど、と思いつつも、どこで話そうかと思っていたときだった。
ちょうどどこかに(たぶん、隣町)に到着したみたい。
もうすぐ客が降りていこうとしていた。
興味が無くてあまり話を聞いていなかったぼくは「え?」と思う。
ユキが、彼女のゆかりの地である水族館に寄るみたいだぞと囁いてきて、ぼくは納得した。これなら、どさくさに紛れて、人が多くても探せるよね。
もう、彼らは来ているのだろうか。
見当たらないけど、でも、たぶん、ぼくらが捕まえられるチャンスは今しかない。
ステージから降りようとしていた古里さんから、ハンドマイクを奪うと、ぼくは、ステージに上り、呼びかける。
「待ってください!」
周囲が、ぴたりと動きをやめ、変な小学生を見上げている。
帰りたい。
「この紙を拾いましたっ」
言うと、辺りがざわついた。
そりゃそうだ。
「えーと……じゃなくて。この船で」
小学生が何か言ってもな、とふと思う。
そのとき、横から母さんが出てきて、マイクを奪って、そして手からラムネを取り上げて、見せながら言う。
「趣味で探偵をしていたものだが! 今日、この船に麻薬密輸の証拠が乗り込んでいるときき、オーナーからこの船の調査を依頼されていた!」
きぃぃぃぃいいいいいんと、マイクがハウリング。うるさい。
みんなが、ぞろぞろと、ホールに戻ってくる。この、謎の説得力の差よ。
そして単なるデートじゃなかったのか。
「しかし、取引方法がわからず、あれこれと、策を練っていたのだが」
「どうやら娘が、彼らの暗号を解いてくれたらしいのだ。ははは、さすがわが娘だな」
「はあ……」