「ユキ。ぼくは人を好きになれない。嫌いってことじゃなくて」
「興味が無いのか?」「わからないんだ。他人なのに自分のために何かしてくれるとか、そういうのが、こわいなって思う」「ははあ、それは嬉しい、じゃないのか」
「嬉しいのかな、わかんないんだ。すぐに《きっと居なくなるなー》って思うからかな」「そうなのか?」「話しても途中で飽きてしまうし、そんなに遊びに行きたいって思わない。一緒に居ても、傷つけてしまうだけなんだ。相手のプラン通りとか相手のことを考えてとか、そういうのが出来ない。電話もすぐ切ると思う。そこまで寂しくないし、上手く言えないからいちいち会話を無限ループ地獄にしてしまうと思う。かみ合わせることが苦手みたいだ。だから、みんな呆れて最後には嫌ってしまうんだ、誰だって例外なくそうなんだ」「ネネは何が楽しい?」「ぼんやりその辺の町を眺めて、適当に日が暮れて、爪楊枝でタワーを作るのに5時間使う、そんな感じの無駄すぎる毎日が好き」「爪楊枝でタワーを作るんだ……」「一緒に作ってくれる人居ないかな」「どうだろ、あまり居ないだろうな」「そっか。でもね、特別なことって苦手なんだ」「特別は、ほかが無いからか?」「ううん、誰もいないから、全部特別なんだ、特別ばかりだから、そこからひとつを選びたくないんだ」「そうか、まるで浮気癖のある感じの」「違う」「ごめんごめん」「好きと嫌いが、同位置にあるのかもしれない」「そうか」「でも、それを責められてしまうくらいなら全部嫌いでいいって思う」「そうか?」「だって悲しいだろう、誰かが好きになってくれたところで、ぼくは一生何にも思ったりしない。冷たいだろう」「それは違うよ、だって今こうして私と話してくれている」「それは……誰にだってそうすると思うよ。誰だって好きなんだ、たぶん」「ふふふふ、そうか? でも、私が倒れたとき、助けを呼んでくれたんだろう? 偶然通りかかったんじゃなくって」「それ、は」「それにナツを庇ったんだろう?」「どうして、それを」「でも違うって言ってた。なぜだ?」「だってあいつ、自分のことをクズだとか言うんだ。ぼくは嫌いなクズなんか助けたりしないのに。酷くない? ごみを愛でてる変人って言われた気分なんだけど。仇で返された気分。もう口を利かない」「あははははは! それはナツが悪い」「だろ?」「そっか。きっと、いろんなものが好きなんだな」「うん。でも、ぼくはいつも、誰かを傷つけることしか出来ないから……」「そうか?」「そうだよ、だから、もう、終わろうかなって思う」



