「ウズメ様、そろそろお暇してもよろしいでしょうか?もう夕方のようで……。明日も仕事がありますから。舞、とても素晴らしかったです。続きはまた今度見させていただいてもよろしいですか?」

灰治がそう声をかけたものの、ウズメの閉じられた口からは何の言葉も発せられない。表情も舞っている時とは違って無表情に変わり、何かがおかしいと灰治の本能が警告し始める。

「ウズメ様?」

灰治が喉の奥から何とか言葉を絞り出して言うと、ウズメは大きく息を吐く。そして指を鳴らした。刹那、灰治の背後に一瞬にして男性が二人現れ、灰治を地面に押さえ付ける。

「なっ、何を!!」

灰治は必死にもがくが、まるで縄で縛られているかのように動けない。戸惑う灰治をウズメは見下ろし、ニコリと笑う。その笑顔はいつものような優しいものではなく、どこか狂気的だった。

「うふふ。あたし、ただの人間の女の子じゃないの。神楽と芸能の神。あなたは絶対私に逆らえないの!」

「えっ……」

灰治がさらに戸惑っていると、能面のような顔をしていた演奏者たちが再び楽器を鳴らし始める。そして、ウズメは再び舞い始めた。

「ほら、あたしを見て。目を逸らさないで。あなたのために踊っているんだから……」

それは、永遠のような軟禁生活の始まりを告げる音色と舞だった。