お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 アイリーンとコパルの会話が終わったところにオスカーが訪ねてきた。
「姫さん、そろそろ文字を教えて貰う時間なんだけど」
 オスカーは言いながら、コパルのことを見つめた。
「取り込み中かな?」
「いいえ。私と、お嬢様の話は終わっております」
 コパルはクルーに対しても折り目正しく敬語を使うが、日頃、そんな丁寧な話し方をされたことのないクルー達は、その度に居心地の悪そうな顔をした。
「なあ、姫さん。この子にさ、もっと砕けた話し方をするように言ってくれよ。俺らはさ、一つ船に乗って互いに命を預ける仲間で、使用人でもなけりゃ、雇い主でもないんだからさ。何だか調子が狂っちまうんだよ、こいつ、ちっこいくせに堅苦しくてさ」
 オスカーは言うと、アイリーンが立ち上がって扉の所まで歩いてくるのを待った。
「外はかなり風が強いぜ、何しろ絶好調に飛ばしてるから。だから姫さんも、ちゃんとロープに掴まらないとダメだからな」
 オスカーは言うと、手早くアイリーンの細いウェストに腰縄を回し、飛ばされないように張ってあるロープにアイリーンを繋いだ。
「私もお供いたします」
 コパルは言うと、アイリーンの後に続き、今や体の一部のように寝るときも付けている腰縄の金具に張られているロープを通した。
「じゃあ、姫さん、行くぜ」
 オスカーはアイリーンの手を取ると、慣れた様子で甲板を進み、あっと言う間に下へと降りる階段の所までエスコートしてくれた。
 安全用のロープは階段の下まで張られているので、アイリーンはそのまま階段を下り、下でロープをはずして貰った。