「あの、お嬢様、少し伺ってもよろしいのでしょうか?」
コパルは躊躇いがちに問いかけた。
「どうしたの? 何か心配でも?」
アイリーンが問いかけると、コパルはいつものようなハキハキとした物言いではなく、囁くように問いかけてきた。
「その、クルーの方から、目的地はエイゼンシュタインではなく、デロスという国だと伺いました。また、デロスは島国で、そこからエイゼンシュタインまで陸路で旅するのは、とても時間がかかるとも。理由は、今現在、デロスと国境を接しているパレマキリアという国の間で戦が起こっているからだと伺いました。なぜ真っ直ぐにエイゼンシュタインに帰られるのではなく、わざわざ戦をしている危険なデロスに向かわれるのですか? ジョージ様も、かなりお怪我は良くなっていらっしゃいますが、船旅がこの様に楽なものならば、デロスから陸路でエイゼンシュタインを目指されるよりも、船旅の方がお体にも良いと思うのですが・・・・・・」
コパルの言葉は確かに的を射ていた。エイゼンシュタインに行くならば、このまま船で向かう方が遥かに安全で近いが、アイリーンとウィリアムの本当の目的地はエイゼンシュタインではなくデロスだ。しかし、その辺の事情をコパルやカトリーヌに説明する間もなく、緊急事態とばかりに船に乗り込みタリアレーナを出発して来てしまったと言うのが現実だった。
兄のウィリアムと、二人にどう説明するかを相談したいと思っていたアイリーンだったが、顔を合わせると結婚の話に戻ってしまいそうで、アイリーンはあのタリアレーナでの辛かった日々に続き、兄のウィリアムと顔を合わせるのを避けていた。しかし、航海が残り半分になった今、何も知らないコパルだけでなく、ウィリアムの世話をしているカトリーヌも、なぜ海路エイゼンシュタインに向かわないのかと、きっと考えているだろうとアイリーンは思った。
しかし、クルーに身分を明かすことのできないアイリーンとしては、しばらくの間、コパルになんと説明するべきか悩み言葉を選んだ。
いつも、そんなことのないアイリーンが黙したので、コパルは訊いてはいけないことを口にしたのかと、今にも謝罪の言葉を口にしようとしていた。
「コパル」
「お嬢様」
二人は殆ど同時に口を開いた。
「失礼いたしました。どうぞ、お続け下さい」
コパルは謝罪すると口を閉じた。
「コパル、今ここで全てを説明することは出来ないのですが、一つだけ話しておくべき事があります」
アイリーンの言葉に、コパルが背筋を伸ばし真剣な眼差しを向けた。
「私とお兄様は、訳あって出身を偽っていました。それは、あのコパルが見つけて教えてくれた刺客の目を欺くためだったのです。そのため、お兄様はエイゼンシュタイン出身と学友にもお話ししていたのです。ですが、お兄様も私も本当はデロスの出身なのです」
アイリーンの言葉にコパルは少なからず驚き、何かを考えるかのように視線を床に落とした。
六ヶ国同盟所属の大国であるエイゼンシュタインで騎士になれると思っていたコパルにしてみれば、名前も聞いたことのないような、しかも戦争中の小さな島国、デロスに連れて行かれるなどと聞いてはいないし、騙されたと言われても仕方のないことだとアイリーンは思った。
「でも、心配しないでください。エイゼンシュタインには、私達の叔母夫婦が居ますから、コパルがデロスよりもエイゼンシュタインに行きたいと考えるなら、直ぐにエイゼンシュタインに行かれるよう紹介状も用意して、客船でエイゼンシュタインまで行かれるようにします。そして、向こうで剣術の稽古や騎士見習いとして学べるように手配すると約束します。ですから、ほんの少しの間で良いので、デロスで過ごしてみてはもらえませんか? デロスに着いて、この船を下りたら、本当のことを全て話すと約束します」
アイリーンの真剣な言葉に、コパルは頷くと『わかりました』と答えた。
エイゼンシュタインに行けば、本物の伯爵家の子息であるジョージがいる。最初はコパルも混乱するだろうが、優秀なコパルを預ければ、叔母夫婦も喜んでコパルの世話をしてくれるだろうとアイリーンは思った。
何しろコパルの身元保証人は、デロスの王太子と王女になるのだから、エイゼンシュタイン王家もそれなりの融通をきかせ、コパルが騎士見習いになれるよう取り計らってくれるはずだ。
コパルは躊躇いがちに問いかけた。
「どうしたの? 何か心配でも?」
アイリーンが問いかけると、コパルはいつものようなハキハキとした物言いではなく、囁くように問いかけてきた。
「その、クルーの方から、目的地はエイゼンシュタインではなく、デロスという国だと伺いました。また、デロスは島国で、そこからエイゼンシュタインまで陸路で旅するのは、とても時間がかかるとも。理由は、今現在、デロスと国境を接しているパレマキリアという国の間で戦が起こっているからだと伺いました。なぜ真っ直ぐにエイゼンシュタインに帰られるのではなく、わざわざ戦をしている危険なデロスに向かわれるのですか? ジョージ様も、かなりお怪我は良くなっていらっしゃいますが、船旅がこの様に楽なものならば、デロスから陸路でエイゼンシュタインを目指されるよりも、船旅の方がお体にも良いと思うのですが・・・・・・」
コパルの言葉は確かに的を射ていた。エイゼンシュタインに行くならば、このまま船で向かう方が遥かに安全で近いが、アイリーンとウィリアムの本当の目的地はエイゼンシュタインではなくデロスだ。しかし、その辺の事情をコパルやカトリーヌに説明する間もなく、緊急事態とばかりに船に乗り込みタリアレーナを出発して来てしまったと言うのが現実だった。
兄のウィリアムと、二人にどう説明するかを相談したいと思っていたアイリーンだったが、顔を合わせると結婚の話に戻ってしまいそうで、アイリーンはあのタリアレーナでの辛かった日々に続き、兄のウィリアムと顔を合わせるのを避けていた。しかし、航海が残り半分になった今、何も知らないコパルだけでなく、ウィリアムの世話をしているカトリーヌも、なぜ海路エイゼンシュタインに向かわないのかと、きっと考えているだろうとアイリーンは思った。
しかし、クルーに身分を明かすことのできないアイリーンとしては、しばらくの間、コパルになんと説明するべきか悩み言葉を選んだ。
いつも、そんなことのないアイリーンが黙したので、コパルは訊いてはいけないことを口にしたのかと、今にも謝罪の言葉を口にしようとしていた。
「コパル」
「お嬢様」
二人は殆ど同時に口を開いた。
「失礼いたしました。どうぞ、お続け下さい」
コパルは謝罪すると口を閉じた。
「コパル、今ここで全てを説明することは出来ないのですが、一つだけ話しておくべき事があります」
アイリーンの言葉に、コパルが背筋を伸ばし真剣な眼差しを向けた。
「私とお兄様は、訳あって出身を偽っていました。それは、あのコパルが見つけて教えてくれた刺客の目を欺くためだったのです。そのため、お兄様はエイゼンシュタイン出身と学友にもお話ししていたのです。ですが、お兄様も私も本当はデロスの出身なのです」
アイリーンの言葉にコパルは少なからず驚き、何かを考えるかのように視線を床に落とした。
六ヶ国同盟所属の大国であるエイゼンシュタインで騎士になれると思っていたコパルにしてみれば、名前も聞いたことのないような、しかも戦争中の小さな島国、デロスに連れて行かれるなどと聞いてはいないし、騙されたと言われても仕方のないことだとアイリーンは思った。
「でも、心配しないでください。エイゼンシュタインには、私達の叔母夫婦が居ますから、コパルがデロスよりもエイゼンシュタインに行きたいと考えるなら、直ぐにエイゼンシュタインに行かれるよう紹介状も用意して、客船でエイゼンシュタインまで行かれるようにします。そして、向こうで剣術の稽古や騎士見習いとして学べるように手配すると約束します。ですから、ほんの少しの間で良いので、デロスで過ごしてみてはもらえませんか? デロスに着いて、この船を下りたら、本当のことを全て話すと約束します」
アイリーンの真剣な言葉に、コパルは頷くと『わかりました』と答えた。
エイゼンシュタインに行けば、本物の伯爵家の子息であるジョージがいる。最初はコパルも混乱するだろうが、優秀なコパルを預ければ、叔母夫婦も喜んでコパルの世話をしてくれるだろうとアイリーンは思った。
何しろコパルの身元保証人は、デロスの王太子と王女になるのだから、エイゼンシュタイン王家もそれなりの融通をきかせ、コパルが騎士見習いになれるよう取り計らってくれるはずだ。


