タリアレーナから飛ぶようにしてエクソシアまでやってきたこともあり、距離に対して消費した水や食料などは大幅に少なかったが、次はデロスまで途中補給が受けられないので、嵐に逢った時の予備も含め、必要なものをしっかりと積み込む必要があったので、夜も近いと言うのに、クルーは作業を止めようとはしなかった。それは、カルヴァドスからエクソシアでの停泊時間は最短にするように命令されていたからだったが、それをアイリーンが知ることはなかった。
戦に出ると言ったカルヴァドスのことを考えると、アイリーンは心配でたまらなかった。許されるのなら、いっそ戦場で一緒に命絶えても側にいたいと考え、最後まで蜘蛛の糸のように細い希望に縋ろうとする自分にアイリーンはギュッと唇を噛みしめて涙をこらえた。
ちょうどそこへ、ノックの音がした。
「どうぞ」
アイリーンが答えると、コパルとカトリーヌに支えられたウィリアムが立っていた。
「入っても良いか?」
それは、もしかしたらアイリーンが初めて聞く、兄からの入室の許可を求める言葉だったかもしれない。
兄と妹とは言え、兄は産まれたときからの王太子。王室にとってアイリーンは、ウィリアムにもしものことが起こったときの代用品にすぎなかった。海の女神の神殿では姫巫女として崇め奉られ、特別な神事を司る重要な存在だったが、妹であるアイリーンに兄であり王太子でもあるウィリアムが敬意を払う事も、許しを得る事もなかった。
戦に出ると言ったカルヴァドスのことを考えると、アイリーンは心配でたまらなかった。許されるのなら、いっそ戦場で一緒に命絶えても側にいたいと考え、最後まで蜘蛛の糸のように細い希望に縋ろうとする自分にアイリーンはギュッと唇を噛みしめて涙をこらえた。
ちょうどそこへ、ノックの音がした。
「どうぞ」
アイリーンが答えると、コパルとカトリーヌに支えられたウィリアムが立っていた。
「入っても良いか?」
それは、もしかしたらアイリーンが初めて聞く、兄からの入室の許可を求める言葉だったかもしれない。
兄と妹とは言え、兄は産まれたときからの王太子。王室にとってアイリーンは、ウィリアムにもしものことが起こったときの代用品にすぎなかった。海の女神の神殿では姫巫女として崇め奉られ、特別な神事を司る重要な存在だったが、妹であるアイリーンに兄であり王太子でもあるウィリアムが敬意を払う事も、許しを得る事もなかった。


