お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 寝室に入ると、ふかふかの羽毛布団とシルクのシーツを前に、侍従がカルヴァンをシルクの寝間着に着替えさせてくれ、まだ湿っている髪の毛をタオルで丁寧に拭いてくれた。
 こんな至れり尽くせりの生活をするのは、三人の令嬢との婚約が整ったと父に言われ、断固婚約を拒否すると言って父の言葉をはねのけ、皇宮から追い出されて以来のことだった。
 しかし、不思議なことに、こうした生活に戻ると決心を固めてみると、何もかも当然のようで、カルヴァンは何の違和感も感じず、ただ元の生活に戻っただけだと感じた。
 ベッドに入ったカルヴァンの側に控えようとする侍従に灯りを消すように命じてから、カルヴァンは思い直して侍従に部屋から下がるように命じると『アンドレ以外は誰も入れるな』と命じた。
 船が波を割って進む音を聞きながら、自分の寝室に人の気配がすると無意識にアイリーンを求めてしまいそうでカルヴァンとしては一人になりたかった。
 エクソシアを出港して以来、余分な乗船者がいないことは確認済みではあったが、アイリーンをカルヴァンから横取りしようとしている皇帝が、どんな手でカルヴァンを陥れるかは想像も付かなかったので、メイドにでも寝込みを襲われ、その身の潔白を失わないように、カルヴァンは警戒に警戒を重ねていた。
 それでも、アイリーンと離れ、エクソシアに帰って皇太子という立場を受け入れた直後とは違い、一日弱とはいえ気ままなカルヴァドスに戻り、アイリーンとの逢瀬をあれ程までに自分が無力だと思い知らされる形で終えた今、避けうる全ての災厄と万難を排してアイリーンと向き合いたいという思いがカルヴァドスの中で強くなっていた。

(・・・・・・・・アイリ、必ず迎えに行くから、それまで早まった事をしないでくれ・・・・・・・・)

 カルヴァンは別れ際のアイリーンのことを思い出しながら、苦しい想いを必死に押さえ、猛スピードでエクソシアを目指す船に揺られながら眠りに落ちていった。

☆☆☆