お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

「殿下、お夜食をご用意いたしました」
 侍従がテーブルをセットし、側に控えた。既にアンドレは下がっており、皇太子付きの侍従しか部屋には居ない。
「ブランデーをグラスで・・・・・・」
 命じながら席に着くと、チーズに生ハム、サラダといった胃に優しい軽い夜食を摂り、運ばれてきたグラスのブランデーを味わった。
 時間的には、夜食と言うよりも、早い軽食と言った方が相応しい時間だったが、それは船乗りの生活で言えばと言うことで、皇太子の生活で言うなら、まだまだ夜食の時間と言えない時間でもなかった。
「殿下、寝室のご用意が整いました」
 夜食を食べ終わるのを見計らったように、侍従がカルヴァドスの耳元で囁いた。
「分かった」
 グラスのブランデーを飲み干すと、カルヴァドスは立ち上がり続きの寝室へと移動した。
 船首の部屋はどうしても波が当たってうるさいと言うこともあり、カルヴァンの部屋は船尾側に位置していた。そして、左舷側の続き部屋が寝室、右舷側の続き部屋が執務室になっていた。
 航海士だった経験を持つカルヴァンとしては、船尾よりも船首の方が進む先が見えて好きなのだが、皇太子という立場を鑑みると、危険にさらされやすい船首ではなく、事故が起こったときに比較的安全な船尾に船室が船尾にあるのは納得がいった、しかも、この船は基本、皇帝か皇后、もしくは皇太子しか使わない船だ。