お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 アイリーンが窓を閉めているとノックの音がした。
「どうぞ」
 応えるとコパルが部屋に入ってきた。
「ローズお嬢様、いま、お部屋からローズお嬢様以外の声が聞こえたのですが?」
 訝しむようなコパルの言葉に、アイリーンは笑顔で答えた。
「お兄様には内緒よ。国に帰る船の手配のことで連絡がきたの」
 アイリーンはどこまで聞こえていたかわからなかったので、船のことで話をごまかした。
「実は、奥様に報告するべきか悩んでいたのですが、今日の夕方、あのパレマキリアの軍人らしき男が、お屋敷の近くを彷徨いているのを目に致しました」
 コパルの言葉に、アイリーンの背中を冷たいものが流れていった。

(・・・・・・・・もしかして、お兄様が生きていることが知れてしまったの? この屋敷に戻るために、葬儀のフリまでしたのに。お兄様には、窓辺に近付かないようにお話ししなくては・・・・・・・・)

「コパル、お兄様には報告したの?」
「いえ、未だです。ジョージ様には、明日の朝、ご報告に参ります」

(・・・・・・・・私が行くよりも、コパルが報告した方が良いのかも知れない。お兄様に逢えば、また、逃げるように勧められる。でも、私は逃げられないのだから・・・・・・・・)

「じゃあ、コパル。よろしくお願いね」
 アイリーンは言うと、心を落ち着けて寝る準備を始めようとした。
「あの、ローズ様。本当に、私のような者が、お供させていただいてよろしいのでしょうか?」
 躊躇いがちなコパルの言葉に、アイリーンは笑顔で頷いた。
「もちろんよ、コパル。一緒に行きましょう」
「ありがとうございます。では、私はこれで失礼いたします。夜分遅くに、大変失礼いたしました」
 コパルは丁寧にお辞儀をするとアイリーンの部屋から出ていった。
 コパルを見送り、アイリーンは灯りを消すとベッドに入った。

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