「アイリ、もっとそばへ」
アイリーンはゆっくりとウィリアムの側へと寄ると、兄の手とは思えないくらいやせ細った手を握った。
「すまない、婚約を解消したばかりのそなたに、このような話をするなど、無神経も良いところだった。フレドが不貞を働くとは思っても居なかった。パレマキリアのダリウス王子を牽制する事ばかりを考え、そなたにはつらい思いをさせてしまった」
ウィリアムはゆっくりとアイリーンを抱き締めた。
「お兄様、そのようなことはございません。フレドの事は決して不貞などではございません」
「しかし・・・・・・」
アイリーンの知らないところで、アルフレッドが相手の女性と深い仲になっているかも知れない可能性を考えると、やはりウィリアムには不貞としか思えなかった。
「確かに、カトリーヌさんに王太子妃は荷が重いでしょう。たぶん、平民の出のカトリーヌさんも、その事は理解していると思います。もし、お兄様が正体を明かし、貴族どころか、王族だと知れば、心配されるようなことを考えたりはされないでしょう。そして、国立の楽団に推薦したいとお話しすれば、きっと、それで分かってくださると思います」
「アイリ」
ウィリアムは昔からは想像ができないくらい落ち着いたアイリーンの様子に違和感を覚えた。昔のアイリーンなら、きっと、こんなに素直に理解することはなく『お兄様、身勝手がひどすぎます! もう、お兄様なんて大嫌いですわ。しかも、婚約者でもない方と肌を重ねるなんて、不潔です!』位は言いきったはずだった。
「アイリ、そなた好きな男が出来たのか?」
ウィリアムの問いに、アイリーンはギクリとした。
「なぜ、そのようなことを? 私にはずっとフレドという婚約者がおりましたのですよ」
「だが、国を離れてからは違った。なにしろ、婚約は解消になったのだからな」
アイリーンはウィリアムから目をそらした。
(・・・・・・・・ムリだわ。お兄様をごまかすなんて。きっと、私がカルヴァドスさんを愛していることを知られてしまう・・・・・・・・)
「咎めるつもりはない。王宮と神殿を往復する毎日を過ごしていたアイリだ。外の世界を知り、大勢の異性に出逢えば、心を惹かれる相手の一人や二人出来ても仕方のないことだ」
ウィリアムは優しく言った。
「しかし、王族として純潔を守らなくてはならないことはそなたも分かっているはず。まさかとは思うが、間違いは起こしていないな?」
そう、男のウィリアムならば、間違いを犯しても『数のうち』もしくは、『何事も経験』で済むが、女のアイリーンの場合、それはあってはならない間違いなのだ。
アイリーンはゆっくりとウィリアムの側へと寄ると、兄の手とは思えないくらいやせ細った手を握った。
「すまない、婚約を解消したばかりのそなたに、このような話をするなど、無神経も良いところだった。フレドが不貞を働くとは思っても居なかった。パレマキリアのダリウス王子を牽制する事ばかりを考え、そなたにはつらい思いをさせてしまった」
ウィリアムはゆっくりとアイリーンを抱き締めた。
「お兄様、そのようなことはございません。フレドの事は決して不貞などではございません」
「しかし・・・・・・」
アイリーンの知らないところで、アルフレッドが相手の女性と深い仲になっているかも知れない可能性を考えると、やはりウィリアムには不貞としか思えなかった。
「確かに、カトリーヌさんに王太子妃は荷が重いでしょう。たぶん、平民の出のカトリーヌさんも、その事は理解していると思います。もし、お兄様が正体を明かし、貴族どころか、王族だと知れば、心配されるようなことを考えたりはされないでしょう。そして、国立の楽団に推薦したいとお話しすれば、きっと、それで分かってくださると思います」
「アイリ」
ウィリアムは昔からは想像ができないくらい落ち着いたアイリーンの様子に違和感を覚えた。昔のアイリーンなら、きっと、こんなに素直に理解することはなく『お兄様、身勝手がひどすぎます! もう、お兄様なんて大嫌いですわ。しかも、婚約者でもない方と肌を重ねるなんて、不潔です!』位は言いきったはずだった。
「アイリ、そなた好きな男が出来たのか?」
ウィリアムの問いに、アイリーンはギクリとした。
「なぜ、そのようなことを? 私にはずっとフレドという婚約者がおりましたのですよ」
「だが、国を離れてからは違った。なにしろ、婚約は解消になったのだからな」
アイリーンはウィリアムから目をそらした。
(・・・・・・・・ムリだわ。お兄様をごまかすなんて。きっと、私がカルヴァドスさんを愛していることを知られてしまう・・・・・・・・)
「咎めるつもりはない。王宮と神殿を往復する毎日を過ごしていたアイリだ。外の世界を知り、大勢の異性に出逢えば、心を惹かれる相手の一人や二人出来ても仕方のないことだ」
ウィリアムは優しく言った。
「しかし、王族として純潔を守らなくてはならないことはそなたも分かっているはず。まさかとは思うが、間違いは起こしていないな?」
そう、男のウィリアムならば、間違いを犯しても『数のうち』もしくは、『何事も経験』で済むが、女のアイリーンの場合、それはあってはならない間違いなのだ。



