ベッドの上に枕を重ねて寄りかかるようにしているウィリアムは、カトリーヌの部屋で見つけた時とは、全く別人の様だった。
医師の話では、傷に入っていた異物のせいで傷が塞がらず膿み続けていたのが逆に幸いし、もし異物が入ったまま傷が塞がっていたら、後々、腕を失うような大事になっていたかも知れないが、綺麗に傷口を洗い、異物を取り除くことができ、縫合も出来たので、剣を持てるようになるまで時間はかかるが、片腕の国王になる心配はないと説明を受け、アイリーンは思わず『ヴァイオリンを弾くことは出来ますか?』と医師に尋ね、キャスリーンを唖然とさせた。
「座りなさい、アイリ」
優しい声に、アイリーンはベッド脇の椅子に腰を下ろした。
「よく顔を見せてくれ。この無謀なお転婆姫が、どうしてフレドに頼まず自らこんな遠くまで独りで、メイドも付けずにやってきたのだ?」
ウィリアムは動く左手で愛しそうにアイリーンの頬を撫でながら言うと、ギュッとアイリーンを抱きしめた。
「そのお話は、明日でも。お兄様もお疲れでしょうから、今晩はよく休んで下さいませ」
アイリーンが言うと、ウィリアムは頭を横に振った。
「いや、その話だけは聞いておきたい。国のことも知りたいし、第一、どうやって父上の許可を取ったのだ? あの父上がお前の一人旅など許すはずがない」
怪我をしていても、やはり兄は兄だとアイリーンは溜め息を尽きそうになった。
あのバラックでの再会以来、ウィリアムが国のことや細々としたことをアイリーンから聞きたいことは分かっていたが、カトリーヌが甲斐甲斐しく看病していたり、キャスリーンが泣きながら見舞ったり、屋敷の主である叔父のロベルトが見舞ったりと、肝心の妹であるアイリーンは自室に控えて何とかこの最悪の話題から逃げ続けていた。
「それは、その、お父様は、私が国をでていることはご存じありません」
アイリーンが言うと、ウィリアムの眉がつり上がった。
医師の話では、傷に入っていた異物のせいで傷が塞がらず膿み続けていたのが逆に幸いし、もし異物が入ったまま傷が塞がっていたら、後々、腕を失うような大事になっていたかも知れないが、綺麗に傷口を洗い、異物を取り除くことができ、縫合も出来たので、剣を持てるようになるまで時間はかかるが、片腕の国王になる心配はないと説明を受け、アイリーンは思わず『ヴァイオリンを弾くことは出来ますか?』と医師に尋ね、キャスリーンを唖然とさせた。
「座りなさい、アイリ」
優しい声に、アイリーンはベッド脇の椅子に腰を下ろした。
「よく顔を見せてくれ。この無謀なお転婆姫が、どうしてフレドに頼まず自らこんな遠くまで独りで、メイドも付けずにやってきたのだ?」
ウィリアムは動く左手で愛しそうにアイリーンの頬を撫でながら言うと、ギュッとアイリーンを抱きしめた。
「そのお話は、明日でも。お兄様もお疲れでしょうから、今晩はよく休んで下さいませ」
アイリーンが言うと、ウィリアムは頭を横に振った。
「いや、その話だけは聞いておきたい。国のことも知りたいし、第一、どうやって父上の許可を取ったのだ? あの父上がお前の一人旅など許すはずがない」
怪我をしていても、やはり兄は兄だとアイリーンは溜め息を尽きそうになった。
あのバラックでの再会以来、ウィリアムが国のことや細々としたことをアイリーンから聞きたいことは分かっていたが、カトリーヌが甲斐甲斐しく看病していたり、キャスリーンが泣きながら見舞ったり、屋敷の主である叔父のロベルトが見舞ったりと、肝心の妹であるアイリーンは自室に控えて何とかこの最悪の話題から逃げ続けていた。
「それは、その、お父様は、私が国をでていることはご存じありません」
アイリーンが言うと、ウィリアムの眉がつり上がった。



