お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 夕暮れ時にカトリーヌの部屋を訪ねた一団に、三人は目を見開くだけでなく、あんぐりと口まで開いてしまった。
「この度は、誠にご愁傷さまでございます」
 大金を積まれ、事情を知っているだろう葬儀屋は、ゆったりとウィリアムが入る大きな棺桶を部屋に運び込むと、カトリーヌに手伝わせてウィリアムを棺桶の中に寝かせた。
「空気穴はしっかり開けて御座います。ですが万が一、何か不具合がございましたら蓋を叩いてくださいませ」
 葬儀屋は説明すると、アイリーンとカトリーヌに黒い喪服のドレスを手渡した。
「念のため、一回、蓋をさせて戴きます」
 葬儀屋は言うと、アイリーンとカトリーヌを残して部屋から出て行った。
 残されたアイリーンとカトリーヌは、渡された喪服に急いで着替えた。
 棺の中のウィリアムは問題ないようで、蓋を叩くこともなく、まるで本当に亡骸が入っているのではと不安になるくらい静かだった。
 ちょうど着替えが終わった頃、ノックがして葬儀屋と一緒にコパルがってきた。
 コパルはキャスリーンにしっかりと言いくるめられているので、両目から涙をぽろぽろと零しながらアイリーンのもとへと歩み寄った。
「侯爵様の計画でございます」
 コパルの言葉に、アイリーンはすべてが侯爵に知れてしまったことを理解した。
 葬儀屋は、二人の準備が出来たことを確認すると、若い男たちを呼び寄せ、ウィリアムの入った棺桶を肩に担ぎ、カトリーヌの部屋を後にした。


 外に用意されていた馬車は、コパルが教えてくれた、この街に相応ししい古びたみすぼらしい馬車だった。
 コパルは棺と共に馬車に乗り、アイリーンとカトリーヌは用意された二台目の馬車に乗った。
 二台の馬車は裏通りをゆっくりと走り抜け、表通りへと角を曲がった。
 ドレスのベールで顔を隠していたアイリーンとカトリーヌは、夕食時を前に表の道をウロウロとているパレマキリアの軍人に息を飲んだが、みすぼらしい二台の馬車に視線を走らせた男は、それが葬儀屋のものであることを見て取ると、すぐに視線をそらした。
 馬車は速度を上げて大通りを通り抜けると、カタリの中心街を目指した。