もともと、来客など想定していない部屋なので、ぐちゃぐちゃもいいところだし、片付ける収納すらこの部屋にはない。
いつもならしないノックをして扉を開けた瞬間、カトリーヌの後ろから入ってくるアイリーンの姿にウィリアムは怪我も忘れて飛び起きた。
「お兄さま!」
アイリーンは言うと、ベッドの上のウィリアムに走り寄って抱きついた。
「どうしておまえがここに? どうやって国を出た? 父上が許すはずないだろう? 神殿での務めはどうした?」
ウィリアムは問いかけながら、アイリーンが答えられないことを理解していた。侯爵家の一室ならばまだしも、このようなどこから秘密が漏れるともわからないバラック小屋で、話せる内容ではなかった。
「コパルは?」
ウィリアムは少し冷静になって問いかけた。
「屋敷に、お兄様からのお手紙を届けに参りました」
「そうか。それならば、暗くなれば迎えが来るだろう。それまでは、お前もここにいなさい」
部屋の主であるカトリーヌの意見も聞かず、ウィリアムはアイリーンに命じた。
「かしこまりました、お兄さま」
アイリーンが答えると、カトリーヌがキッシュとパン、コーヒーをウィリアムに運んできた。
「食事は済んだのか?」
ウィリアムはアイリーンに尋ねた。
「はい。侯爵邸で戴いて参りました」
二人の会話は、兄と妹の会話にしては堅苦しいなとカトリーヌは思いながら二人のことを見つめた。
「そうか。残念ながら、二人で分けるほどの量がないが、本当にコパルは記憶力が良いな。キッシュもパンも、どちらも私のお気に入りの店の物なのだよ」
ウィリアムは言うと、アイリーンの前で食事を始めた。
「それは、素晴らしいですわ。お兄様のお眼鏡にかなうお店の物でしたら、是非、私も帰国する前に一度、戴いてみたいですわ」
傷のせいで上手くフォークの使えないウィリアムをカトリーヌがベッドサイドに跪き、自然な様子で手を差し伸べて助けた。
普通なら、妹がすることではないのかと思いながら、カトリーヌは直立不動でウィリアムと話し続ける、光り輝くように美しいアイリーンのことは見ないようにした。
「ありがとう、カトリーヌ」
補助をしてくれるカトリーヌに、ウィリアムは礼を言った。
「お兄様、お怪我の具合はいかがですの?」
独りでフォークを使うことのできないウィリアムを見つめ、アイリーンは心配げに尋ねた。
「医者らしい医者に診て貰っているわけではないからなんともあやしいものだが、背中の傷はそんなでもないが、腕の傷が心配だ。もう三ヶ月近も経つというのに、良くなる気配すらない」
「とにかく、侯爵邸で良いお医者様を呼んで戴いて、動けるようになったら、直ぐに国に帰りましょう」
アイリーンの言葉に、カトリーヌは胸が締め付けられるような苦しさを感じた。
いつもならしないノックをして扉を開けた瞬間、カトリーヌの後ろから入ってくるアイリーンの姿にウィリアムは怪我も忘れて飛び起きた。
「お兄さま!」
アイリーンは言うと、ベッドの上のウィリアムに走り寄って抱きついた。
「どうしておまえがここに? どうやって国を出た? 父上が許すはずないだろう? 神殿での務めはどうした?」
ウィリアムは問いかけながら、アイリーンが答えられないことを理解していた。侯爵家の一室ならばまだしも、このようなどこから秘密が漏れるともわからないバラック小屋で、話せる内容ではなかった。
「コパルは?」
ウィリアムは少し冷静になって問いかけた。
「屋敷に、お兄様からのお手紙を届けに参りました」
「そうか。それならば、暗くなれば迎えが来るだろう。それまでは、お前もここにいなさい」
部屋の主であるカトリーヌの意見も聞かず、ウィリアムはアイリーンに命じた。
「かしこまりました、お兄さま」
アイリーンが答えると、カトリーヌがキッシュとパン、コーヒーをウィリアムに運んできた。
「食事は済んだのか?」
ウィリアムはアイリーンに尋ねた。
「はい。侯爵邸で戴いて参りました」
二人の会話は、兄と妹の会話にしては堅苦しいなとカトリーヌは思いながら二人のことを見つめた。
「そうか。残念ながら、二人で分けるほどの量がないが、本当にコパルは記憶力が良いな。キッシュもパンも、どちらも私のお気に入りの店の物なのだよ」
ウィリアムは言うと、アイリーンの前で食事を始めた。
「それは、素晴らしいですわ。お兄様のお眼鏡にかなうお店の物でしたら、是非、私も帰国する前に一度、戴いてみたいですわ」
傷のせいで上手くフォークの使えないウィリアムをカトリーヌがベッドサイドに跪き、自然な様子で手を差し伸べて助けた。
普通なら、妹がすることではないのかと思いながら、カトリーヌは直立不動でウィリアムと話し続ける、光り輝くように美しいアイリーンのことは見ないようにした。
「ありがとう、カトリーヌ」
補助をしてくれるカトリーヌに、ウィリアムは礼を言った。
「お兄様、お怪我の具合はいかがですの?」
独りでフォークを使うことのできないウィリアムを見つめ、アイリーンは心配げに尋ねた。
「医者らしい医者に診て貰っているわけではないからなんともあやしいものだが、背中の傷はそんなでもないが、腕の傷が心配だ。もう三ヶ月近も経つというのに、良くなる気配すらない」
「とにかく、侯爵邸で良いお医者様を呼んで戴いて、動けるようになったら、直ぐに国に帰りましょう」
アイリーンの言葉に、カトリーヌは胸が締め付けられるような苦しさを感じた。


