お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

「ああ、姫さん、今頃どうしてるんだろうな」
 船縁からタリアレーナの方を見つめてカルヴァドスが呟いた。
「若、まだ、本日出航したばかりでございますが」
 半ばあきれたようにアンドレが言った。
「安全なところなら安心して居られるんだよ。でも、あそこにはパレマキリアの軍人が彷徨いて、ウィリアム王太子を探してる。いつアイリーンと鉢合わせするかと思うと、気が気じゃないんだよ!」
「そのために、クロードとパスカルをつけております」
「わかってる! でも、心配なのは心配何だよ! あの鬼畜王子のことだ、もし、アイリーンがタリアレーナにいたことが知れたら、因縁付けて直ぐにも妻に迎えようとするだろう!」
 まだまだ言い続けるカルヴァドスにアンドレが手を焼いていると、ドクターが顔を見せて『恋につける薬なし』と、声にださずに言ってウィングした。
 アンドレは、助け船を出す気のない戦友のドクターの言葉にため息を付きそうになりながら、耳にたこが出来るほど聞かされ続けているアイリーンの美しさの話を延々と聞かさせられた。

 夕食の席も、アイリーンがいないとこんなに侘しいものかと思うくらい雰囲気が暗かった。本来、女性のいない貨物船のディナーはこれが普通なのだが、女性が同席する楽しさを知ってしまったからか、カルヴァドス以外も、皆、何となく盛り上がりにかけて、晩餐の席はすぐにお開きなった。


 自室に帰っても寂しさは増すばかりなので、カルヴァドスは船主の海の女神像の所まで行き、アイリーンの無事を祈った。
 それから、寂しく自室に戻ると、すぐにベッドに入って眠りについた。

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