余程、パレマキリアの軍人だという男が気になったのか、コパルはアイリーンを連れて馬車を乗り継ぎ、早々に屋敷に戻ってしまった。
「コパル、お兄様を探さなくてはいけないの。時間がないのよ!」
屋敷に戻ったアイリーンは、コパルに事の重要性を訴えた。
「分かっております。ですが、明日は、あの男に逢わないように注意しましょう。あの男は、とても危険な感じがしました」
コパルは言うと、申し訳無さそうに頭を下げた。
アイリーン自身も、あの男に『姉か?』と問われたときに感じた嫌な感覚は、まさにダリウス王子に手を捕まれた時のような不快さと同じ物を持っていた。
「いいのよ、コパル。私もあの人には二度と会いたくないわ。あの人、私の知っている人によく似た目をしていたわ」
アイリーンが言うと、コパルがアイリーンを見上げた。
「その方は、どなたでいらっしゃいますか?」
コパルは不思議そうに問い返した。
奴隷のコパルのことを卑しいものとして扱う人間は多かったが、貴族の娘のアイリーンに対して、あのような失礼な態度をとる人間がいるというのは、コパルにとっては初めて耳にすることだった。
「私の婚約者です」
アイリーンの言葉に、コパルは目を見開いた。
「そ、そうでしたね。ローズお嬢様は、ジョージ様の婚約者ではなく妹君でいらっしゃいましたね。でも、その様なお相手とローズお嬢様を婚約させるなんて、ジョージ様らしくございませんね」
コパルの言葉に、アイリーンは頭を横に振った。
「お兄様はご存知ないのよ。それに、絶対に反対されるわ。でもね、それしかないって、私が決めたの」
アイリーンは言うと、寂しそうに笑って見せた。
「ローズお嬢様が、ご自分で決められたのですか?」
コパルは不思議そうに尋ねた。
「ええ、そう。お父様にも内緒で。それ以外に、大切な物を護る道がなかったから」
アイリーンは言いながら、愛しいカルヴァドスの事を思い出した。
船を下りる前に逢いに来るとは言っていたが、それがカルヴァドスに逢うことが出来る最後だと、アイリーンは覚悟を決めていた。
再会したら、カルヴァドスの未来を祝福し、笑顔で別れると。決して涙は見せないと、そう心に決めていた。
パレマキリアへ嫁ごうと、エクソシアへ嫁ごうと、もう二度と逢うことの叶わぬ相手、アイリーンがカルヴァドスを愛していると知られるだけで、ダリウス王子はカルヴァドスの命を狙うだろうし、エクソシアの皇帝も公爵であるカルヴァドスを疎ましく思うだろう。だから、この秘めた想いは、絶対に誰にも知られてはいけない。
「コパル、お兄様を探さなくてはいけないの。時間がないのよ!」
屋敷に戻ったアイリーンは、コパルに事の重要性を訴えた。
「分かっております。ですが、明日は、あの男に逢わないように注意しましょう。あの男は、とても危険な感じがしました」
コパルは言うと、申し訳無さそうに頭を下げた。
アイリーン自身も、あの男に『姉か?』と問われたときに感じた嫌な感覚は、まさにダリウス王子に手を捕まれた時のような不快さと同じ物を持っていた。
「いいのよ、コパル。私もあの人には二度と会いたくないわ。あの人、私の知っている人によく似た目をしていたわ」
アイリーンが言うと、コパルがアイリーンを見上げた。
「その方は、どなたでいらっしゃいますか?」
コパルは不思議そうに問い返した。
奴隷のコパルのことを卑しいものとして扱う人間は多かったが、貴族の娘のアイリーンに対して、あのような失礼な態度をとる人間がいるというのは、コパルにとっては初めて耳にすることだった。
「私の婚約者です」
アイリーンの言葉に、コパルは目を見開いた。
「そ、そうでしたね。ローズお嬢様は、ジョージ様の婚約者ではなく妹君でいらっしゃいましたね。でも、その様なお相手とローズお嬢様を婚約させるなんて、ジョージ様らしくございませんね」
コパルの言葉に、アイリーンは頭を横に振った。
「お兄様はご存知ないのよ。それに、絶対に反対されるわ。でもね、それしかないって、私が決めたの」
アイリーンは言うと、寂しそうに笑って見せた。
「ローズお嬢様が、ご自分で決められたのですか?」
コパルは不思議そうに尋ねた。
「ええ、そう。お父様にも内緒で。それ以外に、大切な物を護る道がなかったから」
アイリーンは言いながら、愛しいカルヴァドスの事を思い出した。
船を下りる前に逢いに来るとは言っていたが、それがカルヴァドスに逢うことが出来る最後だと、アイリーンは覚悟を決めていた。
再会したら、カルヴァドスの未来を祝福し、笑顔で別れると。決して涙は見せないと、そう心に決めていた。
パレマキリアへ嫁ごうと、エクソシアへ嫁ごうと、もう二度と逢うことの叶わぬ相手、アイリーンがカルヴァドスを愛していると知られるだけで、ダリウス王子はカルヴァドスの命を狙うだろうし、エクソシアの皇帝も公爵であるカルヴァドスを疎ましく思うだろう。だから、この秘めた想いは、絶対に誰にも知られてはいけない。


