『久しぶりだな、息子よ
直ぐに逃げて戻るような軟弱者に育てたつもりはなかったが、風噂ではずいぶん立派な船乗りになったそうではないか。
そなたが、デロスの姫に恋しているという話は随分前から耳に入っていたが、私にデロスの姫を嫁がせる気になるとは、思っても見なかったぞ。』
そこまで読んだカルヴァドスは、余りのことに目を疑った。カルヴァドスの計画では、アイリーンを娶るのは自分であって、決して父ではない。
『 お前が貴族連中を焚きつけてくれたおかげで、長くパレマキリアとの反戦だの、和平だのを掲げていた連中が重い腰を上げそうだ。
お前が妻は欲しくないと、好きでもない娘を妻にしたくないと出て行ったときから、お前には期待していなかったが、よもやこの手にデロスの守護者の地位を引き寄せ、あの美しいと誉れ高い、緋色に輝くデロスの真珠をこの手に入れられるようにしてくれるとは、考えてもって居なかった。』
手紙の内容に、思わずカルヴァドスは椅子から立ち上がった。
手紙に溢れる、父のデロスの守護者への地位と緋色に輝くデロスの真珠、つまりアイリーンを自分の妻にしようという明確な意志を感じ取ったからだった。
(・・・・・・・・まずい、どこで間違った? 俺は、父にアイリーンを渡すなんて考えたこともないぞ。ちゃんと手紙に、アイリーンとの結婚を許して欲しいと書いたはずだ!・・・・・・・・)
震える手で手紙を持ち、続きにカルヴァドスは目を通した。
『直ちに帰国し、パレマキリア殲滅に加わるように。あの小生意気なパレマキリアから、デロスを奪い返す。
良い働きをしたお前に、あの馬鹿王太子からデロスの真珠を奪い私に届ける役目を授けよう。
但し、お前が私の意志に反して協力しないというのなら、お前から公爵の地位と財産をすべて没収する。
海で暮らしていたお前に陸での闘いは厳しいだろうが、お前の愛していたデロスの真珠を勝手に穢そうとした王太子に印籠を渡す役を与えてやろう。
カーライル公爵、直ちに帰国し、パレマキリアへ出征せよ』
余りのことに、カルヴァドスは思わずその場に膝をついた。揺らいだ体にぶつかり、椅子がけたたましい音をたてて床に転がった。
カーライル公爵の地位も財産にも未練はない。しかし、それを失えば、絶対にアイリーンと結ばれることが出来ないこともカルヴァドスはよくわかっていた。
「坊ちゃま、いかがなさいました?」
驚いてやってきたアンドレが、悲痛な面もちのカルヴァドスを見つめた。
「お手紙を拝見しても?」
控えめに言うアンドレに、カルヴァドスは手紙を渡した。
目を通したアンドレは驚いてカルヴァドスを見つめた。
「なぜ、このようなことに? デロスの姫の結婚相手であれば、カルヴァドス様の方が年齢的にも釣り合っていることは明白でございます」
アンドレは動揺を隠せずに言った。
「それは、俺が、カーライル公爵としての義務をずっとなおざりにし続けていたからに違いない。この挙げ句、アイリが妻になれば、母上のお立場も苦しいものになる。既に、父上の妻の数は数えきれないほど、その挙げ句、デロスの真珠と謳われるアイリが妻となれば、父上はデロスとの関係を鑑み、母上を正妻から降格し、アイリを正妻とするかも知れない」
絶望して言うカルヴァドスに、アンドレはかける言葉がなかった。
「出航を一日ずらしてくれ。今晩、アイリに事情を説明しに行きたい。それから、父に返事を書く」
カルヴァドスは言うと、手紙と共に届けられたカーライル公爵家の紋章入りの便箋に返事をしたためた。
デロスの庇護者となる事には賛成だし、自ら出陣することも受け入れるが、アイリーンとの結婚に関しては、再考して欲しいと。自分はエクソシアがデロスの保護者となりパレマキリアを一掃する事には大賛成だし、協力は惜しまないが、アイリーンを妻にすることだけは考え直して欲しいと。自分はカーライル公爵として、アイリーンに結婚を申し込むつもりである事を尊重して欲しいと懇願した。
手紙に封をし、封蝋を押したカルヴァドスは、手紙をアンドレに託し風呂にはいることにした。
☆☆☆
直ぐに逃げて戻るような軟弱者に育てたつもりはなかったが、風噂ではずいぶん立派な船乗りになったそうではないか。
そなたが、デロスの姫に恋しているという話は随分前から耳に入っていたが、私にデロスの姫を嫁がせる気になるとは、思っても見なかったぞ。』
そこまで読んだカルヴァドスは、余りのことに目を疑った。カルヴァドスの計画では、アイリーンを娶るのは自分であって、決して父ではない。
『 お前が貴族連中を焚きつけてくれたおかげで、長くパレマキリアとの反戦だの、和平だのを掲げていた連中が重い腰を上げそうだ。
お前が妻は欲しくないと、好きでもない娘を妻にしたくないと出て行ったときから、お前には期待していなかったが、よもやこの手にデロスの守護者の地位を引き寄せ、あの美しいと誉れ高い、緋色に輝くデロスの真珠をこの手に入れられるようにしてくれるとは、考えてもって居なかった。』
手紙の内容に、思わずカルヴァドスは椅子から立ち上がった。
手紙に溢れる、父のデロスの守護者への地位と緋色に輝くデロスの真珠、つまりアイリーンを自分の妻にしようという明確な意志を感じ取ったからだった。
(・・・・・・・・まずい、どこで間違った? 俺は、父にアイリーンを渡すなんて考えたこともないぞ。ちゃんと手紙に、アイリーンとの結婚を許して欲しいと書いたはずだ!・・・・・・・・)
震える手で手紙を持ち、続きにカルヴァドスは目を通した。
『直ちに帰国し、パレマキリア殲滅に加わるように。あの小生意気なパレマキリアから、デロスを奪い返す。
良い働きをしたお前に、あの馬鹿王太子からデロスの真珠を奪い私に届ける役目を授けよう。
但し、お前が私の意志に反して協力しないというのなら、お前から公爵の地位と財産をすべて没収する。
海で暮らしていたお前に陸での闘いは厳しいだろうが、お前の愛していたデロスの真珠を勝手に穢そうとした王太子に印籠を渡す役を与えてやろう。
カーライル公爵、直ちに帰国し、パレマキリアへ出征せよ』
余りのことに、カルヴァドスは思わずその場に膝をついた。揺らいだ体にぶつかり、椅子がけたたましい音をたてて床に転がった。
カーライル公爵の地位も財産にも未練はない。しかし、それを失えば、絶対にアイリーンと結ばれることが出来ないこともカルヴァドスはよくわかっていた。
「坊ちゃま、いかがなさいました?」
驚いてやってきたアンドレが、悲痛な面もちのカルヴァドスを見つめた。
「お手紙を拝見しても?」
控えめに言うアンドレに、カルヴァドスは手紙を渡した。
目を通したアンドレは驚いてカルヴァドスを見つめた。
「なぜ、このようなことに? デロスの姫の結婚相手であれば、カルヴァドス様の方が年齢的にも釣り合っていることは明白でございます」
アンドレは動揺を隠せずに言った。
「それは、俺が、カーライル公爵としての義務をずっとなおざりにし続けていたからに違いない。この挙げ句、アイリが妻になれば、母上のお立場も苦しいものになる。既に、父上の妻の数は数えきれないほど、その挙げ句、デロスの真珠と謳われるアイリが妻となれば、父上はデロスとの関係を鑑み、母上を正妻から降格し、アイリを正妻とするかも知れない」
絶望して言うカルヴァドスに、アンドレはかける言葉がなかった。
「出航を一日ずらしてくれ。今晩、アイリに事情を説明しに行きたい。それから、父に返事を書く」
カルヴァドスは言うと、手紙と共に届けられたカーライル公爵家の紋章入りの便箋に返事をしたためた。
デロスの庇護者となる事には賛成だし、自ら出陣することも受け入れるが、アイリーンとの結婚に関しては、再考して欲しいと。自分はエクソシアがデロスの保護者となりパレマキリアを一掃する事には大賛成だし、協力は惜しまないが、アイリーンを妻にすることだけは考え直して欲しいと。自分はカーライル公爵として、アイリーンに結婚を申し込むつもりである事を尊重して欲しいと懇願した。
手紙に封をし、封蝋を押したカルヴァドスは、手紙をアンドレに託し風呂にはいることにした。
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