「ああ、アイリーン!」
キャスリーンは手振りで椅子に座るように指示すると、呼び鈴の紐を引いた。
キャスリーンに呼ばれてやってきたメイド長は、命じられるままキャスリーンの使っていない財布とお金の入った財布入りのハンドバッグを持って戻ってきた。
キャスリーンはメイド長をさがらせてから、新しい革製の財布と言っても、飾りのついた革袋の様なものなのだが、そこに自分の財布からありったけの硬貨を移して手渡した。
「よいこと、アイリーン。世の中には、こうしてお金を入れる財布と呼ばれる物があるのです。それから、ウィリアム殿下の行方が分からない今、あなたがデロスから来たことを知られるのは望ましくありません。ですから、絶対にデロスのお金は使わないようになさってください。ハンドバッグの中のお金は私が一旦預かり、後でお返しいたします。よろしいですね?」
何がそんなにキャスリーンを困らせたのかアイリーンには理解できなかったが、おとなしく叔母の言葉に従った。
「お金の使い方は、コパルが良く知っています。だから、お金を使うときはコパルに任せれば大丈夫です。いいですね?」
「はい、叔母様」
アイリーンは笑顔で答え、財布を受け取りバッグに放り込んでいたデロス硬貨をザラザラとテーブルに転がした。
「ああ、アイリーン。あなた、こんな大金で何をするつもりだったのです? それよりも、王女のあなたがどうやってこんな大金を?」
王女がお金を持ち歩かない事はキャスリーンも良く知っていたので、驚いて目を丸くした。
「これは、フレドが用意してくれたのです」
「こんな大金、数ヶ月分、もしかしたら半年分位の彼のお給料ではありませんか?」
キャスリーンの言葉に、アイリーンは目を丸くした。
「ああ、きっと、これはあなたとの結婚式の為に貯めていたお金でしょう。嫡男とは言え、彼の立場で自由になるのは自分の稼いだお金くらいでしょうから」
(・・・・・・・・ああ、なんてこと! これは、ローズとの結婚式の為のお金だったのね。何も言わず、ローズもフレドも・・・・・・・・)
考えると、アイリーンは更に胸が一杯になった。そして、何も分からず、何も知らなかった自分が、脳天気で救いがたい馬鹿に思えてアイリーンの心は苦しかった。
(・・・・・・・・どうして、お留守のお兄さまの代わりが出来るなんて、病のお父様の代わりが私に出来るなんて、そんな大それたことを考えられたのだろう。私は何も知らなくて、何も分かってなくて、何も出来ないのに。お父様がお加減を悪くなさったとき、躊躇わずにお兄様にお知らせしていれば、そうしたら、お兄様は帰国され難を逃れることができたかも知れないのに・・・・・・・・)
考えれば、考えるほどアイリーンは辛く苦しくなった。
キャスリーンは手振りで椅子に座るように指示すると、呼び鈴の紐を引いた。
キャスリーンに呼ばれてやってきたメイド長は、命じられるままキャスリーンの使っていない財布とお金の入った財布入りのハンドバッグを持って戻ってきた。
キャスリーンはメイド長をさがらせてから、新しい革製の財布と言っても、飾りのついた革袋の様なものなのだが、そこに自分の財布からありったけの硬貨を移して手渡した。
「よいこと、アイリーン。世の中には、こうしてお金を入れる財布と呼ばれる物があるのです。それから、ウィリアム殿下の行方が分からない今、あなたがデロスから来たことを知られるのは望ましくありません。ですから、絶対にデロスのお金は使わないようになさってください。ハンドバッグの中のお金は私が一旦預かり、後でお返しいたします。よろしいですね?」
何がそんなにキャスリーンを困らせたのかアイリーンには理解できなかったが、おとなしく叔母の言葉に従った。
「お金の使い方は、コパルが良く知っています。だから、お金を使うときはコパルに任せれば大丈夫です。いいですね?」
「はい、叔母様」
アイリーンは笑顔で答え、財布を受け取りバッグに放り込んでいたデロス硬貨をザラザラとテーブルに転がした。
「ああ、アイリーン。あなた、こんな大金で何をするつもりだったのです? それよりも、王女のあなたがどうやってこんな大金を?」
王女がお金を持ち歩かない事はキャスリーンも良く知っていたので、驚いて目を丸くした。
「これは、フレドが用意してくれたのです」
「こんな大金、数ヶ月分、もしかしたら半年分位の彼のお給料ではありませんか?」
キャスリーンの言葉に、アイリーンは目を丸くした。
「ああ、きっと、これはあなたとの結婚式の為に貯めていたお金でしょう。嫡男とは言え、彼の立場で自由になるのは自分の稼いだお金くらいでしょうから」
(・・・・・・・・ああ、なんてこと! これは、ローズとの結婚式の為のお金だったのね。何も言わず、ローズもフレドも・・・・・・・・)
考えると、アイリーンは更に胸が一杯になった。そして、何も分からず、何も知らなかった自分が、脳天気で救いがたい馬鹿に思えてアイリーンの心は苦しかった。
(・・・・・・・・どうして、お留守のお兄さまの代わりが出来るなんて、病のお父様の代わりが私に出来るなんて、そんな大それたことを考えられたのだろう。私は何も知らなくて、何も分かってなくて、何も出来ないのに。お父様がお加減を悪くなさったとき、躊躇わずにお兄様にお知らせしていれば、そうしたら、お兄様は帰国され難を逃れることができたかも知れないのに・・・・・・・・)
考えれば、考えるほどアイリーンは辛く苦しくなった。



