お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 地理の勉強では、大国タリアレーナには国境を接する多数の隣国があるが、殆どの国がタリアレーナとの冊封体制を取っていると習った覚えがある。しかし全てではなく、一部の国はタリアレーナと直接国境を接していないことから冊封体制を拒否しているとも説明を受けた記憶があった。

「つまり、その子たちは奴隷としてこの国で働かさせられているのです」
 叔母の言葉にアイリーンは驚いて目を見開いた。
「奴隷ですか?」
「ええ、生憎。冊封体制をとってる国々のほとんどは貧しく、貢物の代わりに奴隷となる子供や遊興の為の若く美しい女性や見目麗しい若者を供物として献上してくるのです。それが、タリアレーナが自由恋愛の国と呼ばれる所以です。富んだものは若い娘や青年を買い付け、飽きるまで相手をさせ、そして飽きれば競売にかけるのです。ですから、そういう娘や若者はケガをすることもなく、それなりに良い暮らしをしているようですが、国籍がないので、結局は死ぬまで奴隷のままです。旦那様も私も、この習慣は捨てるべきだと思っていますが、若い男女の多くを抱え入れているのが王城である以上、変えることは難しいでしょう」
 奴隷のいないデロスから来た叔母にしてみれば、信じられない習慣だったが、それはもはや習慣ではなく、タリアレーナには文化として定着しているといっても過言ではなかった。
「他の使用人に、あなたが何をしに来たのかを知られたくないので、コパルだけは特別にあなたの部屋への立ち入りを許可します」
「ありがとうございます、叔母様」
「後で連れてきますから、食べ終わったら、ちゃんとした令嬢らしく振る舞って下さいね」
「かしこまりました」
 アイリーンは答えると、出て行くキャスリーンを見送った。
 再び、お腹がぐぅっと鳴り、アイリーンはサンドイッチを急いで口に運んだ。

(・・・・・・・・この姿を見たら、開いた口が塞がらなくなるくらいローズが驚くわね。それから、正気を疑われて、次は病気を疑われるわ。そう思ってみると、お姫様の生活って、堅苦しくて、面倒で、制約が多くて、大変だったのね。お兄様は、それに気付いていたから、もっと大変な国王になる前に自由が欲しかったんだわ。お兄様、どこにいらっしゃるの?・・・・・・・・)

 アイリーンは考えると、小さくため息をついた。